2011年5月25日水曜日

ピッピは床でクッキーを作る

得意げ。
 ピッピの服に着替え終わった瞬間90%くらい満足してしまったのだが、今回の目的はそこではない。




まえおき  
長くつしたのピッピが、どうしても好きだ。
高校1年生の夏休み、山のような宿題の中の一つに読書感想文があった。

クラスごとに選ばれた優秀作は、コンクールに出すという話だった。
本の虫を公言していた私であったが、なんせ読書感想文というものが大きらいだ。
はじめは、太宰治の『グッド・バイ』で書こうと試みたのだが、書き出す前の段階で、「うん、これは無理だな」と気づいてやめた。

そして、『長くつしたのピッピ』に決めたのだ。
県内随一の頭脳を誇る我が母校によって課された読書感想文の題材を。
私は書きまくった。ピッピの何が私をひきつけて止まないかを。
なぜ高校の図書館に『長くつしたのピッピ』が無いのだ、という苦情までツラツラ書きつづった。

コンクール用には、戦争ノンフィクションものを題材にした作品が選ばれ、私の感想文は黙殺された。
あれからはや7年。
「ケッ。中年太りの国語教師にゃわからんさ」、と恨み続けた日々を越え、
ついに私がピッピになる日がやってきたのである。


まえおきは続く
長くつしたのピッピは<ごたごた荘>に一人で暮らしている。
子供の一人暮らしだから、毎日毎日まったくの好き放題だ。 
木に上ってそこでコーヒーを飲んでみたり、ブリキの箱をかぶって歩いて面白がったり、
馬に乗って学校に現れたり(そもそも学校に通っていない)。
 ピッピの存在というのは、あらゆる子供の夢の権化なのだ。

そのようなピッピの数ある魅力的な行動の中でも、一番衝撃を受けたのは、
床でクッキーをじゃんじゃん作る、というものだった。(靴を履いたまま!)
「きったねーーーーー」 と誰もが思うことだろう。
きっとそのクッキーには、砂やら髪の毛やら、なんやらかんやら、練りこまれてしまうに違いない。
だけど、ピッピはもちろん、お隣に住んでる可愛い兄妹、トミーとアンニカも、そんな野暮なことはチラとも思わないのだ。
ピッピは言い放つ。

ショウガ入りクッキーを、すくなくとも五百つくろうなんてときには、
ふつうののばし板なんて、てんで役に立ちゃしない。

そういうことなのだ!  それがすべての理屈だ!
恐れ入った! 恐れ入ったけど、わたしには、まず、掃除にとりかからせてください!!


はじまります

除菌スプレーをひたすら吹きかける

悲しいかな、この時点で子供の奔放さに対する敗北は明らかだ。
除菌スプレー片手に床を磨く子供なんてこの世にいない。

床磨き後の作業工程中に見つけてしまったゴミは、もう、見て見ぬふりをすることにした。
そして 、打ち粉をする。

ああ・・・
ああああ・・・
そして広げる。
・・・・・・。

この葛藤がお分かりいただけるだろうか。
今、私の目の前に広がる光景を、人は≪惨事≫と呼ぶ。
しかし、私は、ただニコニコしながら、広々とした床でショウガ入りクッキーを作りたいだけなのだ。
「問題ないぞー、問題ないぞー、」とマントラのように唱えつづける。 

そしてキューピー3分クッキングのように、クッキー生地が登場。
(掃除してる間に寝かせていた。) 

これを、

こうして、

どーん


この時点で、どうでもよくなった。
部屋全体を眺めてみたら、たいして違和感を感じなかったのだ。
(つまり、どうでもよくなったというより、ただ慣れたんだろう)
いつもクッキーはこうして作っていたような気がしないでもない。
よい兆候だ。いいぞいいぞ。

だから、あとはもうグイグイ伸ばすのみ! 


 
いたって普通の光景のようで、



















床!!

型で抜いて、
オーブンへぶち込んで、
こがした。


第一弾を焼いてる間に、部屋に戻って第二弾の型抜きをしてたら、見事に焦がした。
けど、まあ、いいのだ。そんなのはよくあることだ。


クッキーが焦げるのはよくあることだが、しかし、部屋は未曽有の事態だ。

すっかりこびりついている。

いや、ピッピなら、小麦粉だのバターだののこびりつきなんて気にも留めずに放っておくと思う。
しかし、一般日本家庭である我が家では、玄関で靴を脱ぐシステムを採用しているため、掃除をしないわけにはいかない。
家族に見つかったら大変なのだ。
除菌スプレーに次ぐ、敗北その2である。 
板と板の隙間に入り込んだ小麦粉をひたすら吸い取る。

この後、当然、雑巾がけもした。


そして、ピッピが焼いたクッキーは500枚だったけど、私が焼いたのはたったの70枚強。
どこまでもスケールの差を思い知らされるよ。
しかし500枚も焼いてどうするんだろうか。・・・と思ってしまったのがまた悲しい。
修行が足りんな。


黒く見えている粒は、ゴミじゃなくてクローブ、のはず。